更新:2007.4.1
紙芝居を長く保存するために気をつけたいポイントをあげました。費用や手間をかけなくても、日常のちょっとした注意が資料の劣化対策に有効となります。
温度・湿度
温度も湿度も資料のためには低い方が紙には負担がかかりません。
図書館のような人が読書できる空間を想定した場合は、
温度18~22℃、湿度45~55%RHくらいに保つのが適当だと言われています。
暑過ぎず寒過ぎず、湿度が高過ぎることも低過ぎることもないようにといったくらいの心がけでも、
資料の劣化対策にとっては有効なものとなります。
一日の間で、温度と湿度の差が大きいと、紙の伸び縮みが繰り返されて劣化が進みます。 できるだけ温度や湿度の差が大きくない場所に保管しましょう。
貴重な作品の場合は、中性や弱アルカリ性の紙材料でできた専用の保存箱に保管しておきましょう。「保存箱」の入手方法については、「紙芝居の保存・修理用品」のページを参考にしてください。
紫外線・カビ対策
紫外線対策
紫外線の影響で、紙芝居の紙の色が変色したり、あせたりします。
なるべく直接紫外線があたらない場所を選んで、紙芝居ケースに作品を入れて保管するようにしましょう。
カビ対策
適切な温度と湿度を維持し、換気などで空気を循環させ、定期的に掃除機で清掃するなどで、 カビの発生を予防することがたいせつです。
カビの発生が小規模の場合は、処置するまでは、被害を受けた資料を、
シリカゲルのような乾燥剤といっしょに、乾燥した紙製の箱に入れておきます。
こうした容器に入れることでカビが広がるのを防げるからです。
その後、晴れた温暖な日に、柔らかな白いブラシでカビを払い落とします。
カビの発生が大規模な場合は、専門家に相談しましょう。
貴重な作品を、光・カビ・チリ・ほこりなど、資料を傷める原因となるものから保護するには、 専用の資料保存箱(「紙芝居の保存・修理用品」のページ参照)に入れて保管します。
補修用品の活用
紙芝居の画面が破損した場合
日常使用する作品の場合は、市販されている品質の安定した補修用テープを使うと便利です。 セロテープは、経年変化で粘着力がなくなるだけでなく、紙を変色させて劣化を早めるので、使わないほうがいいでしょう。
貴重な作品の場合は、作品には何も手を加えないで専門家に相談するか、 生麩糊(しょうふのり)を使って中性紙の厚紙を裏面などから目立たないように貼る、などの方法があります。
和紙と生麩糊を使った補修の方法と、「生麩糊」の作り方について、以下にわかりやすく解説されています。 この方法では、資料に化学的な悪影響を与えず、水を使って和紙をはがせば元に戻すことができます。
「リーフレット資料保存」 基礎技術編 6-7頁 (日本図書館協会資料保存委員会)
<http://www.jla.or.jp/portals/0/html/hozon/leaflet3a2001.pdf>
紙芝居ケース(紙製)が破損した場合
紙芝居ケースの破損がひどいときは、替えカバーを利用することもできます。 詳しくは、「紙芝居の保存・修理用品」のページを参考に。
脱酸処理
酸性紙とは
酸性紙とは、1850年代以降に、製紙過程でにじみ止めに硫酸アルミニウムを使用した紙をさします。 紙自体に含まれている酸によって、紙の繊維が食い荒らされ、数十年でボロボロになってしまうのです。
中性紙とは
一方、中性紙は、硫酸アルミニウムにかわって、にじみ止めにアルキルケテンダイマー等を使った紙で、 酸性劣化がおきません。
脱酸処理とは
適切な温度・湿度を一定に保つことなどで、酸性劣化の進行をある程度抑えることはできますが、 もっと確実な方法として、紙自体に含まれる酸をアルカリ物質で中和する方法があります。 この化学的処置を「脱酸」といいます。
紙芝居の「脱酸処理」は、画面一枚づつ、カルシウム、マグネシウムなどを含む水溶液に浸したり、 刷毛で塗布したりして行います。
このような少量脱酸とよばれる方法は手間がかかりますが、 昭和初期に制作された紙芝居の多くは酸性紙が使われ劣化が進んでいることから、 対策を講じる必要に迫られています。
メディア変換
元の紙資料は、保存のために利用を制限し、 デジタル化あるいはマイクロ化した複製資料を利用に供することも保存対策として行われています。本サイトの「デジタル紙芝居ギャラリー」もそういった取組の一つです。
現状では、複製利用のためにデジタル化する、 長期保存のためにマイクロ化することが有効な方策だといわれています。 しかし、電子メディアの歴史は浅く、寿命については未知の部分が多いため、 長期保存に適しているかを判断するのは難しいところです。
紙芝居の貴重資料をメディア変換する場合も、 元の紙資料の保存対策と並行して計画する必要があるといえるでしょう。